過去に生きる 記憶を生きる
はあ……、とため息を吐くとき、
現実に浸ってる。
むっか~!! とするとき、
現実と取っ組み合っている。
おいおい、現実はそこにはないんだよ。
きみは、過去の記憶に
戦いを挑んでいるだけなんだ。
そうだった。
わたしがため息を吐く現実は、
わたしがムカッとする現実は、
過去の記憶が映し出しているだけ。
もちろん、現実として現象は起こっている。
でもね、現象は、ただ起こっているだけ。
「ため息を吐く」とか、
「ムカッとする」とか、
今、現実には、そんなことは起こっていない。
起こっているのは、
心の中にだけ、
それも記憶が、起こしているだけ。
「ため息を吐く」ような経験をした、
「ムカッとする」ような経験をした、
記憶があるだけ。
そういう意味で、
わたしは、過去を生きていた。
過去の記憶に反応して生きていた。
過去の出来事の記憶を真っ新にすれば、
でも、
そんな記憶喪失みたいになれないなら、
せめて、今ここで立ち止まって、
反応することを止めれば、
ううん、反応していることに気付くだけでも、
今起こっている現実は、
まったく違った形に見える。
まったくちがった現実にみえるんだよ。